改めて次男の受験を振り返る
今日は珍しく、我が家の近くの焼肉屋さんに息子と出かけた。他にお客さんは、誰もいなかった。ふだん、めったにお酒は飲まない私だが、今宵は久しぶりにグレープフルーツサワーを薄めに作ってもらう。それでもグラス半分飲むのが精一杯で、そのくらいの量でも十分ほろ酔い気分になれる。
さて、今更ながらだが、今日は改めて次男の受験を振り返ってみようと思う。
彼は、お姉ちゃんやお兄ちゃんと同じ、地元の幼稚園に年中さんから入園し、卒園後は、同じく上のきょうだいと一緒に、地元の公立小学校に通い始める。そして、一年生の冬、マラソン大会の当日に、最愛の父を喪う。
習い事は、そろばん、ピアノ、スイミングくらい。身についたと言えるものは、初段まで取った暗算のみだ。彼は高校数学の問題でも、筆算のやり方の方がよくわからず、計算はすべて暗算でこなす。そこでミスをすることはめったにない。暗算で正確な計算ができると、かなりの速度で問題が解けるが、途中式を省略しすぎて減点されることもあった。
小学校時代は大好きな野球をやりたくて、地元の少年団にも入ったが、最終的には咳喘息になり、土手での練習がよくないと言われ、小5の春には退団した。
そして小6の7月に、突然中学受験をやってみたいと切り出す。上の二人は小学生までいわゆる塾には行っていない。しかし、彼だけは、自ら教科書より難しい算数を習いたいと言い、地元の個人塾に小6から通い始めていた。そのときの私は、実に気楽なもので、高校や大学受験と違い、たとえ志望校に落ちても、地元の公立中学には通えるのだから、普通は必死になって取り組むものとも考えてはいなかった。考えたことは唯一、中学から私立だと給食はないから、毎日お弁当だよなあ。目指す学校は少し遠いし、朝は早いだろう。日中会社で仕事をして、午後5時には上がれるものの、4人分の夕飯の支度と、3人分の朝のお弁当の支度を毎日きちんとこなせるか、不安がないと言えば嘘になる。というのも、私が作るお弁当は、決して大層なものではないが、最後まで通し続けたことがある。それは、冷凍食品を一切使わないことだ。おそらく、そういうものの味には幼い頃から慣れさせておくでもしないと、急にあとからでは難しいのだろう。高校生のときに娘が友達から配られた冷凍食品の唐揚げの味には驚いたそうだ。だが美味しそうに頬張る友達の前では、決して下手なことは言えない。
とまあ、とにかく、学校の教育事情よりも、たびたび不眠に悩まされていた自分自身の負担の方が気にかかっていた。しかし、末の子は幼い頃から、とにかく負けず嫌い。落ちたら、何より本人がどれだけ悔しがるだろうと思うと、もちろん合格するに越したことはなかった。そして、埼玉県内のとある中高一貫校の、普通のコースに進学する。
一番ありがたいと思ったのは、高校受験を省けること。もちろん本人の気が変われば反対はしなかったが、十分その学校に満足していたので、上のコースに上がれる選択肢さえ選ばなかった。
そして迎えた大学受験。なんと東大一本。理由は、退路を断つためだと。他に、心から行きたい大学はないと断言した。皮肉なもので、冠模試の判定がよくない方が、もっと焦って勉強したかなと思う。文系の場合、数学がかなり得意だと、それだけで総合の判定は良く出てしまうのだ。結果、現役では受からず、浪人を余儀なくされた。宅浪は私が反対したが、今思うとそれもありだったのかもしれない。河合塾本郷校には通学したが、質の低い授業は欠席したようだし、期待したほど敏腕講師の授業を受けられなかったり、周りがすごい生徒ばかりで良い刺激を受ける体験もほとんどなかった。その埋め合わせをするかのように、夏期講習や冬期講習は駿台の有名授業を受けたり、臨海セミナーやZ会の通信添削も並行しながら、最終的には自分で選んだ参考書や、一番の基本となる教科書を徹底的に読み込んだ。
受験の結果は以下の通り。
政経、法、商、社学→センター利用で合格
慶應義塾大学経済学部
出願はしたが、入試日の前に早稲田の政経に入学金を納め、本人も私立なら近い方の早稲田に行くと言うので、未受験に。
一橋大学経済学部
後期に出願し、センターの点数により、一次審査は通過。しかし、第一志望合格により、未受験に。
東大文ニ
現役時のようにまた合格最低点が一番高く出たらと心配もあったが、模試の推移を見る限り、特別文ニ志望者がレベルが高いとは言い切れない様子。むしろ、文ニを避け文一や文三に流れる傾向さえ見られた。浪人時の冠模試はすべて、志望科類内順位も5位以内。本人も、「これで落ちたら、きっと自分には合わない大学だったと諦めるよ。ニ浪は絶対にしないよ。もう心身がもたない。」
最後の最後まで、無事に発表されるまでは、無心でいた。アパート探しも事前にはやらない。
湯島天神でのお祓いだけは、やれて本当に良かったと思った。「気は心」。もちろん本人の努力なしでは成し遂げられないが、母からの想い、念のようなものは、見えない形で本人に伝わったはずだ。
今も一生懸命文献を読み、論文執筆に精を出している息子。
彼は言った。
「僕、もともと受験勉強は嫌いなんだよ。本当の実力は、一度限りの点数なんかでは測れない。点を上げるための勉強なんて、小手先のテクニックを使うようで、真の学問とは言えないよ。」
確かに、毎回、授業の感想などを楽しそうに話してくれ、用が済むとすぐに、「じゃ、また勉強してきます。」とさっと自分の部屋に戻って行く。
秋学期からは、家事も加わるけど、なんとかうまくやってくれることでしょう。