終わりよければすべてよし

ひとり親卒業日記

理転を視野に入れるか

東京大学というところは不思議なところで、一般の大学ではあまり考えられないが、文系に入学してから理転をしたり、逆に理系に入学してから文転をする学生もいる。

 

先日、定期試験後に提出予定だった課題論文もようやく終了し、完全に夏休みに入った息子。ある晩、ふとこんなことを語り始めた。

 

普通、文科2類に進学したら、およそ3/4の学生は経済学部に進学する。経済学部に進むこと自体はそれほど難しくはないが、誰しもぎりぎり底点で決まりたくはないから、それなりの成績を取ろうと努力する。第一段階で決定したら、ひと安心できるからね。

 

僕、大学にどんな学科があるのか、いろいろと調べてみたんだよね。

 

そうしたら、工学部の中に、計数工学科という学科があった。普通は理科一類から進学するんだけど、枠が狭いから理系からでもなかなか難しい。そして、その学科にはわずかながら、文系からも進学するひとがいる。たとえば最近の例を見ると、志望者19名中わずか2名が文2から進学している。ものすごい倍率だよね。よほど成績がよくないと、無理だと思う。

 

なんとなく、まだよくはわからないけど、文系から進む就職先は、技術や知識というよりも、コミュニケーション能力の方が必要だったり、評価基準も曖昧だよね。僕、お母さんみたいにコミュニケーション能力が高くはないからね。

 

今思うと、自分はなんで文系を選んだんだろう。確かに歴史や地理は好きだけど、それはひとつの教養であって、仕事に生かすという感じでもない。

 

計数工学科で学べる科目を見ると、面白そうなものが多い。特に数学好きにはたまらないね。ただ、数学は好きだけど、飛び抜けてできるわけではないから、理学部数学科みたいなところはもちろん通用しない。数学って、難易度が上がるとどんどん抽象的になり、最後はほぼ文字になるんだよね、数字というより。自分はそこまで、純粋に数学を極めたいわけではない。  

 

計数工学科では、数理工学や金融工学の理論の柱となる基本的な考え方を学べるそうだが、文系の私には難しすぎて、ここではうまく説明はできない。

 

ただ、面白いことに東大の場合、たとえ文系学部に進んでも、興味があれば、好きな授業を自由に受けることが可能だそうだ。なので、成績が足りずに、もともとの志望であった経済学部に進学しても、アルゴリズムや確率、統計学などより専門的な知識を身につけようと思えば、自分で頑張るという道もある。

 

理転できるひとは、入試の時点でほぼ首席クラスらしいからね。

 

という次男に、「でも、入試の点数と大学での成績は相関関係にないって誰か言ってなかった?」と私が問う。

 

「いや、それは中間層の話だよ。そこはみんな、それほど実力に大きな差はないから、入学してからの頑張り具合で上がるひともいれば、下がるひともいるでしょう。僕の取れた点数は、およそ上位15%以内には入れたとしても、首席はまた全然別格だからね。」

 

うーむ。その別格クラスがみな、理転を目指すものなのだろうか。

 

そういえば、以前娘が早稲田大学に入学して間もない頃、あるサークルの新歓に参加し、初対面の理系女子にこんなふうに言われたそうだ。

「文系から進む就職先ってさ〜。」

 

娘は内心、ちょっとムッとし、「だったらあなたも、こんなハードなサークルになど入らずに一生懸命勉強したら?」と心の中だけで思ったそうだ。

 

確かに自分の若い頃のOL時代を思い出しても思う。営業マンなどは、それこそ学歴など一切関係なく、ひたすら貪欲に積極的に仕事に邁進して行くタイプのひとが、上へ上へと昇進して行く。私のかつての直属の上司も、今や立派な執行役員にまでなっている。

 

息子の場合、まだ将来の具体的な職業像は漠然としている。てっきり、みな最初から学部を決めているのかと思ったら、ぎりぎりまで悩むひとも少なくないらしい。

 

たとえば、文一に入ったが、法律を勉強してみたら実は自分には合わないと気づいたとか。それでも、何事もやってみないと気づけないことがある。やはり、まずはやってみることが大切だそうだ。

 

とにかく、飽くなき知識欲が旺盛な学生が多いことは素晴らしいと思う。

 

約一年後には、進学する学部も決まる頃だろう。果たしてどんな学科を選ぶのか。それは一年後のお楽しみだ。