終わりよければすべてよし

ひとり親卒業日記

再びの孤独感

春休みまるまる2か月間、ほとんど毎日のように教習所に通い、次男は無事に自動車運転免許を取得した。そして再び大学近くのアパートへと戻って行った。

 

この春休み、振り返ると本当に楽しかった。受験の心配もいらない、きょうだい喧嘩の心配もいらない、こんな穏やかな長期休暇がかつてあっただろうか。

 

そして今わたしは、再びひとりの生活へと戻った。そのギャップは激しく、なんだか昨年の秋に初めてひとり暮らしが始まった頃以上に、元気もやる気も食欲も出ない。これで何か仕事でもこなせればいいのだが、今のご時世、マスクが不要な仕事なんてないだろう。在宅でできるような仕事でさえ、最初の1週間だけは都内でマスクをつけながら研修を受ける必要があるという。パニック障害を持っていない人も長時間マスクをつけるのは苦しいという。しかし、こちらはマスクのために、せっかく元気でいられた身体が倒れるかどうかの瀬戸際に追い込まれ、下手をすると電車を止めたり、救急搬送されかねない有様なのだ。

 

そんな中、現在は娘が来年挙げる予定の結婚式場を検討中だ。なんでも、昨年本来なら挙式予定だったカップルが、来年に延期しようというケースが多いらしく、例年では珍しいほど、来年の土日祝がほとんど予約で埋まりかけている状態だそうだ。どうも仮予約というのはできないところが多く、ブライダルフェア、または個別相談に行った当日中に成約をすれば、延期や人数の変更は自由にでき、また数十万ものお勉強をしてくださるという。ただし、あくまでその特典は当日限定。

 

先日は娘の休みである平日に、私と一緒に試食つき個別相談にとある式場を訪れた。そこは、私が若い頃に友人やいとこにお呼ばれした中で、一番印象に残った式場だった。

 

あくまで試しに行ってみるつもりだったが、思いの他、こだわり屋の娘が気に入ってくれた。娘の場合、私などはあまり気がつかない点もくまなく観察する。たとえば、シャンデリアの豪華さ、絨緞の柄、チャペルの雰囲気。食事に関しては、どこもそんなにまずいところはない、ある程度は美味しくて当たり前という感覚らしい。しかし、試食にいただいたワンプレートとデザートは、想像を超える美味しさと意外性があり、好評だった。

 

その日は仕事のため、彼の方は同席していない。よく、細かいことは彼女の方に任せるという新郎も多いだろう。そんな中、コーディネーターさんに聞かれて娘は答えた。

「私よりもっとストライクゾーンは厳しいかな。」

そう、娘も何かとこだわりが強い方だが、相方はさらにこだわりがある人なのだ。まず、玄関に入ったときの第一印象で、どうかが決まるらしい。

 

というわけで、また別の日に彼ひとりで訪問してもらい、彼が納得すれば、私も娘も良いと思った場所なので、その場で成約することになった。今どきはどこも、内金は20万円だ。

 

来年の挙式日や場所が決まれば、とりあえずはホッとできる。

 

子供たちがそれぞれに巣立ち、自立して行くのは、本来は頼もしいことだ。しかし、人間というのはないものねだりをする生きもののようだ。夫亡きあと、あれほど欲しいと思った、ひとりで過ごせる自由な時間。今は山のようにあるというのに、いっこうに気は晴れない。

 

本当に気がふさいでしまうと、誰かと話そうとか、こうやって何か書こうとすら、する気になれなくなる。

 

若い頃の自分とは、まるで人格が変わったかのようだ。ひとりで海外を旅し、ひとりでシェイクスピアの芝居を観に行き、満員電車の中往復2時間40分もの通勤をこなし、英語でのミュージカルやお芝居の舞台にすら立てた自分。

 

そんな、どんな環境にでも馴染める日々が、再び訪れることは果たしてあるのだろうか。

 

それはまだ、今は誰にもわからない。