終わりよければすべてよし

ひとり親卒業日記

風薫る文月

コメダ珈琲

 

ここに足を運ぶのはいつ以来であろうか。ふと、恵実子は思った。

 

日曜日の朝だが、店内はほどよい混み具合だ。満席になるほどいっぱいでは、パンの芳しい香りよりも、人が充満する匂いで押しつぶされそうになる。かといって、あまりに閑散としていれば、地元でさまざまな店が閉店する中、ここもひょっとしたら危ないか、と余計な心配をしてしまうかもしれない。

 

さて、季節限定の瀬戸内レモンを使用したシロノワールが来た。いったん、筆を置き味見するとしよう。

 

実は恵実子は、コメダ珈琲の名物であるはずの、シロノワールを少しも美味しいとは思わない。これならむしろ、ココスというファミリーレストランのココッシュの方がはるかに美味しいと思う。ココッシュという名前は、ココスで出すデニッシュの略らしい。もしかしたらココスは、都会にはなく地方にしかないのかもしれないが。

 

それはそうと、今回の限定品。ミニサイズでオーダーしてみたが、瀬戸内レモンの爽やかな香りが漂うアイスクリームと一緒にいただけば、なんとか3/4切れまでは一気に頬張ることができた。

 

この店でイチオシのドリンクは、コメ黒だ。コクのあるブラジル最上級グレードの豆をベースに華やかに香り高いキリマンジャロブレンドしたプレミアムな一杯とある。これは、550円を決して高いと思ってはいけないようなお味だ。最後までミルクもお砂糖も足さずに十分味わえる珈琲はそうそうない。

 

この店にひとりで来ると、不思議と小説めいた文章を綴りたくなる。将来は本当にせめて一冊くらいは、何か私小説のようなものを書いて、父のように自費出版でもしてみようか。なんて夢を見ることもある。

 

つい先日、用事もあり次男がひと晩だけ泊まりで帰省した。息子を駅まで送り、帰宅したあとは、見事なほど何もやる気が起きない。気がついたら、午後の7:30くらいから冷房をつけっぱなしで眠っていた。寒さに気づき目が覚めると、時間は夜の11:30くらいになっていた。慌てて冷房を消し、歯磨きだけはしてパジャマに着替え、あえて睡眠薬を服用してから再度床につく。やはり、ひとりはさみしいな。と、つくづく感じる。来月にはもう、次男も我が家に戻って来るというのに。今から、息子が社会人になり、再び巣立つであろうその瞬間を、恐れているかのようだ。

 

ひとりの時間が若い頃からあれほど好きだったのは、逆に言うとひとりきりになる時間がかなり少なかったからだ。誰かといる時間は、自分自身と向き合えないような気がして、ときにひとりで好きなことに没頭する時間が必要だったように思う。

 

さあ、ひとり暮らしも、あと1か月と少しだ。今しかやれないことを優先的にやって行こう。

 

普通は、風薫る五月、というものだが、今朝の恵実子には、七月に入り新しい風が自分のそばを通り過ぎて行ったような気がして、今回のタイトルをつけた。