終わりよければすべてよし

ひとり親卒業日記

身に覚えのない世界

9月14日。

 

その日は、ファイザーワクチン2回目の接種予定日だった。場所は自宅から1.5kmほど離れた総合病院だ。そこの病院で、かつて夫が白血病の疑いが強いと診断され、早急に入院先を見つけてもらえたのだった。

 

パニック障害の人は付き添いが必要とかかりつけ医にアドバイスされ、1回目は娘に、2回目は次男に付き添いを頼んでいた。

 

その日、昼食を済ませたあと、まずは次男の運転で道すがらにあるドラッグストアに立ち寄る。接種前後に飲むと良いとされるOS1を買って来てもらう。そのあとは、まだ駐車が苦手な息子に代わり、なんと私自身がハンドルを握り、近くの病院の駐車場まで行く。そこから歩いて病院に入り、まずは受付をする前に、1階のお手洗いに入る。そこまでの記憶は確かにある。そして、そのあとの記憶は、意識不明となったため、今なおまるで思い出せない。

 

ここからは、次男をはじめ、関係者によるお話だ。

 

次男より

「トイレの中で異様に吐く音が聞こえ、すぐに看護師が駆けつけた。見るとお母さんがストレッチャーで運ばれてきた。はじめはいつものパニック発作かなと思った。僕が身内とわかると、検査をするにあたり、いくつかの同意書にサインをした。すぐに結果が判明。[くも膜下出血です。] 聞いた途端、血の気が引いた。それからお母さんが心肺停止になり、蘇生作業をしてもらい、復活する。それから市内でも自宅から車で30分は離れた、脳神経外科病院まで救急搬送される。救急車の付き添いはひとりだけのため、僕が付き添う。救急隊員いわく、かなり危険な状態です。意識はなくとも、声は聴こえてますので、息子さん、お母さんに話しかけてください。僕は必死にお母さんの手を握りしめ、お母さん、がんばってね、がんばってね、と祈るような気持ちで語りかけたよ。お母さんの手が肌色ではなく黒ずんでいて、本当にこわかったけど。病院に到着するまでの20分が本当に長く感じられた。」

 

病院で検査するも、動脈瘤の位置が難しいところにあったため、さらに詳しい検査が2時間くらいかかった。ようやく、午後7時から10時まで、3時間ものカテーテル手術が行われた。

 

手術は無事成功しました。しかし、明日目が覚める保証はありません。翌日目が覚めるひともいれば、半年くらい意識が戻らないひともいます。かなり腕のいい女性の医師が説明する。

 

子供達は、いったいどんな気持ちで、その晩を過ごしたんだろう?

 

翌朝9時に病院から電話。

 

「お母さんの目が覚めたので、すぐに病院にいらしてください。」