終わりよければすべてよし

ひとり親卒業日記

手術翌々日

今の自分がすべてをはっきりとは思い出せないが、手術翌々日になると、次第に意識を取り戻し始める。

 

まず、看護師さんに今日は何日か聞かれると、正確な日付を答えられたそうだ。

 

そして、しきりにお水を求める。すると、この病気は誤嚥することも多いらしく、中でもお水は一番危ないと言われ、当分は与えられないという。代わりに、病院で支給されるアイソトニックゼリーなら咀嚼の練習になると言われ、飲ませてもらえる。正直、何の味もしないため、あまり美味しいとは思えない。変な言い方だが、自分ではお水をきちんと飲み込める自信があった。なので、しきりにお水が飲みたいと欲していたようだ。

 

そして、おそらく手術して4日目以降から、ようやくお水も可になり、病院食も提供されるようになる。

 

初めて飲んだ冷たいお水のなんと美味しいこと。あの味は生涯忘れないだろう。

そういえば、食事が許可される前に、アイスなら食べて良いと言われる。それも普通のカップアイスではなく、クーリッシュのような、チューチュー吸えるタイプ。それを毎日のように摂っていたら、あっと言う間に血糖値が上がってしまい、食事の代わりにアイスが禁止になる。

 

あとで看護師さんに、普通は目が覚めたあと、頭痛がひどいと訴える患者さんが多いんですよ。まだ手術して間もない時期にアイスを食べるひと、初めて見ました。そう、不思議なことにたいへんありがたい話だが、私はもともとめったに頭痛は起きない方だったし、動脈瘤破裂前も、そして意識を取り戻したあとも、かなり頭痛は軽い方のようだ。女性で、お産の痛みの方が辛いと言うひとも、初めて見ましたとリハビリの先生にも驚かれる。普通は、バットで頭を殴られたような痛み、と表現するらしい。そんなことをされたら、死んでしまうではないか。

 

手術1週間後にCTを撮る。すると、興奮ぎみに執刀医の女医さんがやってくる。

「脳内で出血された血液がほとんど綺麗に洗い流されています。これほどのスピードで綺麗になる例は初めてです。1か月経っても、ここまで行かない人もいるんですよ。素晴らしいです。期待してますよ!」

 

その時点での私は、なんのことかよくわからなかった。